Work Text:
ふわりと揺れるフリルのスカートは、太ももが余裕で見えるくらい短かった。膝上まである白い靴下に切れ目なく続く素肌が、どこかえっちだった。黒いワンピースの上に白いエプロン、短い袖、可愛らしい靴。
立浪シオンが春に着せたその服は、可愛い、なんて一言じゃ片づけられない。いや、普通の人なら「可愛い」としか思わないはず……思うべきではない。
というか、他の誰にも思わせてはならない。
春を見て、そんな風に考えるのはシオンだけでいい。スカートがもっと短ければいいのに、とか。中が見えるかな、とか。……まあ、実際に何度か覗いたことはある。偶然を装って。
この服を選んだのは春じゃないし、着るってはっきり許可したわけでもなかった。でも、拒否したわけでもなかった。だから、シオンにとってはそれで十分だった。
「春くん、くるっと回ってくれる?」
言われるまま、春は渋々後ろを向いた。大きなリボンがエプロンの背中に結ばれているのが見えた。
可愛い。素直に言うこと聞いたのも、なぜかたまらなく可愛かった。
「お辞儀してくれたら」なんて、言いかけてやめた。代わりに口元を手で隠す。
そんなことで妄想が止まるわけないのに。
シオンがソファに座り直すと、春も恥ずかしそうに顔を赤らめながら、くすくすと笑って聞いてきた。
「立浪くん……ご主人様として、ぼくに何かしてほしいことがあるの?だから、この服着せたの?」
愛しい。
(ズボン脱ぐ以外のお願いが思いつかないのが、残念だな。)
最初はあんなに恥ずかしがってたくせに、今は笑ってこっちを見てる。冗談のつもりか?
まあ、どうでもいい。その方が、からかいやすい。
正直、こんな馬鹿げた格好をさせたのは、ただ見たかったから。暇つぶしと、欲望の満足。
……でも、本当はもっと――
「じゃあ、お茶でも淹れてくれる?味はなんでもいいよ。」
「は、はいっ!立浪くん!」
無邪気。あくまで純粋なまま、春はリビングを出てキッチンへ向かった。白い靴下に挟まれた太ももに視線を落としながら、シオンは少し期待する。
(転べばいいのに……)
どんな景色が見えるだろうかと、思わず神頼みしたが、当然聞き入れられることはなかった。
(天竺さんがこれ見たらどう思うかな。殺される?いや……去勢されるかもな……)
考えてしまった自分を呪いたくなる。
やがて、扉が開いて春が戻ってきた。ティートレイを持って、どこか緊張した笑顔で。歩くたび、ふわふわ揺れる髪。
「立浪くん、お茶できたよ……二人分、淹れたの。」
春が笑う。でも、シオンは笑っていない。
「……自分の分?そんなこと頼んだっけ?」
「えっ……ご、ごめんなさいっ!」
反射的な謝罪。そんなにすぐ謝るなんて、不公平じゃないか。
(いや、違うな。冗談で『メイドになってもいいよ』なんて言ったのは春だろう?だったら、ちゃんと役割を果たしてもらわないと。)
「まあ、いいよ。こっちに持ってきて。」
優しい風の笑みを浮かべながら手招きする。たぶん、その「優しさ」は春には通じなかったのだろう。むしろ警戒されているような目。
「はい、立浪くん、どうぞ……」
「その呼び方はもう禁止。‘ご主人様’か、何も言わないか、どっちかにして。」
頭にそっと手を置いて撫でると、春の頬が一層赤くなる。ぎゅっと目を閉じて、恥ずかしさに震えている。
……ほんとに、反応がいい。
撫でる手を離し、春の淹れたお茶を傾ける。そのまま、カーペットの上にこぼした。
「えっ……なんで……」
驚いて飛びのいた春が、こぼれた場所を見て、次にシオンを見た。
「片づけてよ。言うこと聞かなかった罰だよ。」
他のメイド相手なら、ここまで優しくはしなかっただろう。
……スカートの中を見たいとも思わなかっただろうけど。
「た、立浪くん……」
「‘ご主人様’って言えって言ったでしょ、春。何度言わせるの?また失敗だね。顔を見せるな。背中を向けて、四つん這いになって、ちゃんと掃除して?」
「でも……」赤くなった顔、スカートの裾に手をやる仕草。
「このスカート、短すぎて……」
小さな声、震えるような訴え。それが、シオンの興奮をさらに煽る。
「……春くん、ほんとにダメなメイドだね。」
低く、冷たい声で叱る。
「言い訳しないで、ご主人様の命令には黙って従うものだよ。」
「で、でも……その、掃除道具がどこにあるのか分からなくて……」
「じゃあ探しておいで。三分以内に戻らなかったら、別の罰を考えるよ。」
涙が溢れそうな顔が、また可愛いと思ってしまう。
少しだけ罪悪感もよぎったけれど、手で追い払うように彼を見送った。
三分……五分……七分……十分経って、ようやく春が戻ってきた。手ぶらで、目の下に乾いた涙の跡を残して。
「た、立浪くん、ごめんなさい、あの……な、なかったんだ、どこにも……掃除道具なんて……!」
(やばいな、俺……)
(いや、最高に面白くなってきた。)
深く、大げさにため息をつく。その一息だけで、春の不安がさらに増したのが分かった。
「まず、遅すぎる。次に、何も持ってない。そして最後に……また呼び方、間違えたよね?」
「ご、ごめんなさい……!」
泣きそうな声。でも、シオンはまだ足りないと思っていた。
「言われたこと守れない、呼び方もできない。お茶もまずい、遅い、バカ……最低のメイドだね。でもね、春くん。」
今までの冷たい表情が、ねじれた笑みに変わる。
「君でも、できることはあるよ。」
「……はい、ご主人様……?」
泣きながらも、どこか期待してしまっているような目で見上げてくる。救いを求める子犬みたいに。
「おいで、春。」
もちろん、春はすぐに近づいてきた。逆らう余裕なんて、彼にはもうなかった。
「スカート……めくってみてくれる?」
「え……スカート……?」
繰り返す声が震えている。目が泳ぎ、裾を握った手がかすかに動いた。
「な、なんで……」
「命令だよ。どうしてできないの?理由、聞かせて?」
羞恥に耐えながらも、頑張ろうとする春がたまらなかった。
この顔、この涙、これだけでも満足できるほどに――
(……でも、もっと見たい。)
「なんでそんなに意地悪するの……?」
(だって、君のことが好きだからだよ。愛してるなら、壊れるまで試したくなるのが自然だろう?)
「意地悪なんかじゃないよ。すっごく優しくしてるんだ。」
(本当に意地悪だったら、とっくに無理やり押し倒してたよ。)
「やだ……怖いよ、立浪くん……」
このままじゃ、何も手に入らない。そう分かって、シオンは声のトーンを変える。
「……怖がらせてごめん。」
優しく、震える手を取って、口づける。屈辱的だとしても、今は引くべきタイミングだった。
その作戦は、功を奏した。
春の手が下がり、顔を赤らめながら、少しだけ考えるような表情をする。
「……スカートをめくったら、これで終わりにしてくれる?」
「もちろん。」
にこりと笑って、頷く。もちろん、本当の意味ではないけれど。
春の目線はシオンの顔ではなく、自分の震える手に向けられていた。ゆっくりと、スカートの裾を持ち上げていく。
――その先にあるのは、シオンのために着けた、レースの可愛い下着。そして、その中に収まった小さな突起。
「……春、これも履いてくれたんだ?」
「だ、だって、渡されたから……!」
驚いたように声を上げた春に、シオンは指を伸ばして、そっと撫でる。
「ご主人様、って言って?」
「ま、マスター……っ!」
