Work Text:
Story Synopsis:
Set immediately after the episode "In Cedric We Trust," right after Cedric parts ways with his longtime sidekick, Wormwood.
Seeing Cedric looking down and disheartened after losing his companion, Sofia decides to invite him out for a comforting tea party.
テーマは
『とある一家の御茶会議』
とある一家の御茶会議 - 初音ミク Wiki - atwiki(アットウィキ) https://share.google/jUoEjinfn3LwaqdIP
https://youtu.be/QJU_jKaj_O8?si=cB7vbEPWIUspWKMQ
時系列
魔法使いの日
https://sofia.fandom.com/wiki/Day_of_the_Sorcerers
セドリックを信じる
https://sofia.fandom.com/wiki/In_Cedric_We_Trust
『セドリックを信じる』を終えて
相棒のワームウッドと決別直後
相棒を失って元気がないセドリックの
為に、ソフィアはお茶に誘おうと考える。
そこに、家族も協力してくれることになった。ローランド国王陛下も【セドリックに優しくする】、【セドリックを信じる】ということを実行に移そうとソフィアに声をかけて仲間に加わろうとする。
「じゃぁ、仲良しパーティーだね!」
と喜ぶソフィア。
ソフィアは招待状を書いて、セドリックに渡しに行く。時間は明日のおやつの時間。
ソフィアはウキウキと魔法の塔への階段を登りだした。
スポットライトは、
変わろうとしているローランド
まだ、ローランドたちからの優しさに
馴染めないセドリック
そして、二人のために架け橋になろうとするソフィア
1度は準備中にお茶会が台無しになりかけるも、中盤で素敵なパーティーにセドリックを誘うことが出来た。
参考エピソード
王室の大混乱
https://sofia.fandom.com/wiki/A_Royal_Mess
和名:素敵なティーパーティー
https://sofia.fandom.com/wiki/Tea_for_Too_Many
グエン
https://sofia.fandom.com/wiki/Gizmo_Gwen
道徳:
夢は、諦めずに努力を続ければ実現できる。
完璧でなくても、記憶に残ることはできる
シンプルさはたいてい良い。
真実を語ることの大切さを学ぶ。
『ちいさなプリンセス ソフィア』と、
ボカロ曲『とある一家の御茶会議』の世界観を融合した、
情緒豊かで心温まる二次創作に仕上げてみました。
原作の『セドリックを信じる』の直後の時系列
キャラクターの配役
(アプリコットティー=ベイリーウィック、ソフィア、
レモンキャンディー=ローランド、
ブルーベリージャム=アンバー
動画や歌詞、ソフィアの既存の原作を元に、
ひとつのストーリーとして膨らませて執筆いたしました。
じっくりとお楽しみください。
とある一家の御茶会議 in エンチャンシア
【プロローグ:悪夢からの目覚め】
ハッと夢から覚める。
額からは不快な冷や汗が流れ落ち、実験机に突っ伏していたせいで首に鈍い痛みが走る。
夢の内容は、つい先日決別したかつての相棒、カラスのワームウッドの冷ややかな羽ばたきと、自分がこれまで犯してきた過ちの記憶。
失敗して、誰からも呆れられ、最後には唯一の相棒だったワームウッドにすら見捨てられ、暗闇に取り残される。
みすぼらしい道化のままで、暗闇の底へとのけ反るように落ちていくところだった。
――そんな、惨めで孤独な悪夢が彼を苛んでいた。
「……また夢、か」
誰もいない、しんと静まり返った魔法の塔。いつもなら「セドリック」と生意気な声で話しかけてくる相棒の姿は、もうどこにもない。
彼は寝不足気味の目をこすり、空っぽの鳥かごに視線を向ける。
「ワームウッド、お前はなぜ……」
ぽつりと呟いた彼の声は、虚しく壁に跳ね返るだけだった。
頭を抱え、ずきずきと痛む
額を押さえる。
「……どうせ私なんて、誰も……」
その時、実験室の重い扉が、遠慮のない明るさでトントンと叩かれた。
「セドリックさん! 入ってもいい?」
驚いてセドリックが顔を上げる。
この声は聞き覚えがあるぞ。
ハッと目を開け、勢いよく体を起こしたセドリックは、乱れたローブを慌てて整える。
ノックされたドアを開けた。
そこには見慣れた紫色のドレスを着た小さな少女――ソフィアが立っていた。その手には、丁寧に折られた一枚の招待状が握られている。
「こんにちは、セドリックさん!
……もしかして、邪魔しちゃった?」
いつものように、実験室に入ってくる彼女を、セドリックは複雑な顔をしながら、無言で中へと招きいれる。
「……なんだ、ソフィア姫か。
実験中に話しかけないでおくれ、今ちょうど、新しい薬の構成を練っていたところで……」
「嘘、居眠りしてたでしょ?
ほら、ほっぺたにインクがついてるよ」
ソフィアはクスッと笑うと、
セドリックは思わず頬に手を当てた。
ソフィアはさらに笑うと、嘘だよ、と冗談めかして言った。
「大人を揶揄うな」と、セドリックが諭すも、彼女は笑ってごめんなさいと謝る。
二人の間にゆるされた軽いノリのやりとり。
セドリックはいつもの尊大な態度を取り繕おうとした。しかし、その瞳の奥にある深い孤独を、ソフィアは見逃さなかった。
「で、今日はなにを私に願いに来たのかね?」
いつものように虚勢を張るセドリックだが、その声には元気がなかった。
ソフィアはそっと彼に近づき、一枚の丁寧に折られた手紙を差し出した。
「これ、セドリックさんへの招待状を届けに来たの。
明日のおやつの時間に、
中庭でお茶会をひらくの。
……セドリックさん、来てくれる?」
ソフィアのまっすぐな瞳に見つめられ、セドリックは気恥ずかしそうに視線を逸らした。
ソフィアからの好意がまだ、受け取れきれない彼は意地悪な態度で逃げ道を探す。
「お茶会だと? 私は忙しいんだ。
そんな暇はない。……気持ちだけ頂くよ。
ありがとう、ソフィア姫」
「だめ」
「……え、ソフィア姫?」
「今回のお茶会は、
セドリックさんのためなの。
だから、絶対に来て」
「私、のために……?」
「うん。最近元気がないから、心配で……。一緒においしいお茶を飲んで、お話ししましょう!」
そう言って、ずずいと彼の胸に招待状を押しつける。ソフィアの有無を言わせぬ笑顔に、セドリックは戸惑いながら招待状を受け取ってしまう。
「お茶会、ねぇ。
まあ……君がそこまで言うなら、
行ってあげなくもないが……」
「わぁ、嬉しい! じゃ、お茶菓子はなにしよう?セドリックさんはなにか、好きなお菓子はある?すきなお茶は?」
「……別に、なんでも構わんよ。
お茶の味など、どれも同じさ。茶菓子なら。ふぅむ。強いて言うなら……ベリーのジャムをサンドしたクッキーとかか。昔、お母さんが作ってくれたんだ」
「ジャムサンドクッキーね! わかったわ、楽しみにしていてね、セドリックさん!」
嬉しそうにドレスの裾を翻す。
「明日、待ってるね!約束だよ」
そしてソフィアの満面の笑みで扉を閉められる。彼女は軽やかな足取りで部屋を去っていった。残されたセドリックは、手元に残された手作りの招待状を、複雑な表情で見つめることしかできなかった。
──────
────
──
魔法の塔から返ってきて、上機嫌に歩くソフィア姫とローランド2世がすれ違う。
彼女は彼に招待状を渡してきたことを話す。
「それで?
セドリックは来そうかい?」
「うん! 来てくれるって!」
「そうか、よかった」
ローランドは少し照れくさそうに笑った。
しかし、途端に彼の表情が曇る。
「……ソフィア。私も参加して良かったのかい?二人だけの方が、セドリックも安心するんじゃかいか?」
「どうして?
参加するって言ったのはパパだよ??
『仲良しパーティー』
仲良くする努力を始めるには、お茶会はうってつけだ、って喜んでたじゃない。
突然。どうしたの? 」
短い回想***。☆.。*º*☆..☆º**。
「お茶会を開く?セドリックの為に?」
「うん、セドリックさん。最近元気ないだ。だから、お茶に誘ってお話しようと思ったの」
「そうだったのか。
私も【セドリックを信じる】と決めたからには、これからはもっと彼に優しく接したいと思っていた。
そうだ、ソフィア。
私もそのお茶会に混ぜてもらえないか。
仲良くする努力を始めるには、お茶会はうってつけだ」
「じゃあ、
三人で仲良しパーティーだね!」
ソフィアは弾むような笑顔で応えた。
。**º☆.***。º。º☆..☆。**º☆.。**º
「どうして? 参加するって言ったのはパパだよ? 『仲良しパーティー』。仲良くする努力を始めるにはお茶会はうってつけだ、って喜んでたじゃない。突然、どうしたの?」
ソフィアに純粋な瞳で見上げられ、ローランドはますます決まり悪そうに王冠の端を指でいじった。
「いや……その、だな。
私はこれまで、彼に宮廷魔法使いとして成果を期待していなかった。一人の人間として向き合ってこなかっただろう?
私がいれば、せっかくの彼のお茶会が、ただの『王への謁見』のように緊張するものになってしまうのではないかと心配になったのだよ」
それを聞いたソフィアは、
ふふっと優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ、パパ。
だって今回は、パパが『セドリックさんを信じる』って決めてから、初めてみんなで集まるお茶会なんだもの。
完璧じゃなくていいの。みんなで一緒に美味しいお茶を飲むことが大事なんだよ」
「……そうだな。
お前は本当に、真のプリンセスだ」
ローランドはレモンキャンディーを口にした時のような、少し酸っぱくて、でもどこかスッキリとした表情でソフィアの頭を撫でた。
「よし! じゃあパパは、お茶会の準備が整うまで、セドリックが退屈しないようにエスコートする役目を引き受けよう。彼が途中で緊張して逃げ出さないようにな!」
「うん! よろしくね、パパ!」
【準備編:完璧と、シンプルと】
ソフィアが「セドリックさんのためにお茶会を開く」と家族に伝えると、ロイヤルファミリーの面々は快く協力してくれることになった。
次の日。朝からソフィアは嬉しさに胸を躍らせ、さっそく準備に取り掛かった。
しかし、ここに「完璧」を追い求めるプリンセス・アンバーが加わったことで、事態は少々きらびやかな方向へと脱線し始める。
中庭の特設テーブルでは、アンバーが使用人たちに厳しい指示を飛ばしていた。
「ちがうわ、食器の間隔は正確に等間隔にして! 完璧じゃなきゃロイヤル・ティーパーティーとは言えないわ!」
そこに、お茶会のためにブルーベリーを摘んできたソフィアがやってくる。
「アンバー、ベリーをたくさん摘んできたよ!」
「ありがとうソフィア。でもそれだけじゃ足りないわ。もっと完璧にしないと」
ソフィアはお茶会に使う敷物とお皿を選ぼうとしていた。
「私は、このシンプルな白いお皿が良いと思うんだけど……」
「まぁ、ソフィア! 宮廷魔術師を招くお茶会が、そんな地味な敷物と普通のお皿でいいわけないでしょう?」
アンバー姫が両手を広げて宣言する。
「もっと盛大に、完璧で、彼の記憶にも残る最高のパーティーに味付けしなくちゃ!
敷物はシルクを可愛いのを選ぶのよ。
食器はすべて純銀にしましょう。
そうそう、
生演奏の楽団も呼びましょう!」
「でも、アンバー。私はセドリックさんがリラックスできるような、小さなお茶会にしたかったのだけど……」
困り果てるソフィアの前に、アンバーは次々と豪華な調度品を指図していく。
「……これじゃあお茶会というより、盛大な【宴会】バンケットみたいになっちゃうよ?」
「良いものはいくらあっても困らないのよ、ソフィア!」
さらに困ったことに、ジェームズが「味見」と称して、準備していたクッキーのサンプルをすべて平らげてしまった。
「あーっ!ジェームズ!
全部食べちゃったの!?」
驚くソフィア。隣で怒ったアンバーは、「こうなったらクッキーじゃなくて、ベリーをたっぷり使った、豪華な4段重ねのケーキを焼かせましょう!クッキーなんて、子どもっぽいもの。」
「えー、僕はクッキーで良いと思うよ」
「ジェームズは黙ってて。さぁ、ソフィア準備を続けましょう?」
さらに計画をエスカレートさせていく
アンバー。
ソフィアは心の中でしぶしぶ同意した。
セドリックさんはあまり派手な場所が得意ではないし、自分はただ、彼の傷ついた心を癒やすような、小さくて温かいお茶会がしたかったのだ。
それでも、アンバーが「セドリックのために」と一生懸命に考えてくれている姿を見て、ソフィアは何も言えなくなってしまった。
しかし、アンバーのこだわりが強すぎた結果、準備は複雑化し、ついには限界を迎える。
「ケーキの配置はそこ!ちがう、もっと左よ! 楽団の皆さん、もっとファンファーレを大きく!」
「わあ、アンバー、危ない!」
ジェームズが叫んだ瞬間には、
もう遅かった。
アンバーの指示で無理に動かされた巨大な4段重ねのケーキの台座がバランスを崩し、盛大な音を立てて傾いた。
──ガッシャーーーン!!!
「キャーッ!?」というアンバーの悲鳴と共に、ベリーがたっぷり乗った高級生クリームの山は、純銀の食器やシルクの敷物の上へと無残に崩れ落ちた。
飛び散ったクリームは楽団の楽器を汚し、中庭の美しい芝生は一瞬にして滅茶苦茶になってしまった。
「そんな……ケーキが……。
私の完璧なパーティーが……」
アンバーは頭を抱えて座り込み、ショックを隠せない。
ソフィアも、中庭を見つめて、深いため息を吐いた。
「どうしよう……パーティーが台無しになっちゃった。材料も足りない。もうすぐセドリックさんが来る時間なのに、もう一度大きなパーティーを準備する時間なんてないわ……」
ソフィアは中庭の片隅で、すっかり落ち込んでしまった。
そこに、母であるミランダ王妃が優しく歩み寄り、ソフィアの隣に座った。
「ソフィア、どうしたの?」
「セドリックさんのために、お茶会でおもてなししたかったのに、失敗しちゃった。アンバーたちも手伝ってくれたのに……」
ミランダはソフィアの目を見て微笑んだ。
「ソフィア。あなたはそもそも、そんなに大きなお茶会を開きたかったの?」
「……ううん。本当は、もっと小さくて、セドリックさんが安心できるお茶会がよかったの」
「だったら、その通りにすればいいのよ。このお茶会の主催者はあなた。
何より大切なのは、ゲストであるセドリックと、あなたの気持ちよ」
その言葉を聞いていたアンバーとジェームズも、クリームのついたドレスと服のまま、反省した様子で顔を出した。
「ごめんなさい、ソフィア。私、あなたのパーティーなのに、自分のやりたいようにやっちゃったわ」
「僕もクッキーを全部食べちゃってごめん。母上の言う通りだよ。ソフィアのやりたいお茶会にしよう!」
「みんな、ありがとう!」
ソフィアは気を取り直すと、心配そうに様子を見ていた執事のベイリーウィックに駆け寄った。
「ベイリーウィック! クッキーもケーキもダメになっちゃったけれど、私がさっき摘んできたブルーベリーはまだ無事なの。これで何か作れないかしら?」
「お任せください、ソフィア姫。
素晴らしい名案がございます。
残りのベリーを練り込んだ、素朴で温かいマフィンはいかがでしょう。
シンプルさはたいてい、
良い結果を生むものです」
お皿は当初ソフィアが希望していた、素朴でシンプルな白い皿に変更された。大きな銀のゴブレットの代わりに、お茶会にふさわしい、温かみのある普通のティーカップが並べられる。
「完璧」な豪華さではなく、ゲストの心に寄り添うシンプルさを。
ベイリーウィックの手助けのもと、ソフィア、アンバー、ジェームズの三人は、今度は笑顔で、こじんまりとした家族のお茶会を大急ぎで作り直していった。
厨房ではベイリーウィックの小言と子どもたちの笑い声が響く。
「……おや、ジェームズ王子、マフィンの粉を撒き散らすのはおやめください!」
「……そうよ、ソフィア。
マフィンの生地に紅茶の茶葉を練り込むのはどうかしら?ベリーだけじゃ、きっと、足りないわ」「それ、良いアイディアだよ、アンバー」
【裏側:時間を稼ぐ王様】
一方その頃、お城の廊下では、ローランド国王が必死に時間を稼いでいた。
中庭でのパーティー準備がトラブルで大混乱しているという報告をベイリーウィックから受けていたローランドは、セドリックがまだ準備中の会場に行ってしまわないよう、彼を連れ回す計画に変更した。
「ああ、セドリック!
ちょうどいいところに。
実は、新しく書斎に飾る絵画の配置について、魔法使いとしての意見を聞きたくてな」
「書斎に飾る絵画?そういうことはベイリーウィックにお尋ねになられては?」
「君の意見が聴きたいんだ。
飾る絵画は魔法の絵画がいいんだ。
君なら作れるだろう?新しい肖像画を作ってほしいんだ」
「はあ……陛下がそう仰られるのなら。しかし、陛下。私はこれからソフィアとの約束が……」
「いいから!着いてきてくれ。そうだ、廊下も頼みたい。こっちは肖像画じゃなくて、廊下を飾る装飾の模様替えをお願いしたい」
言われたとおり、しぶしぶ手を動かす。シンプルな廊下がみるみる豪華に色づけられていく。
仕上がった廊下を見て満足そうに笑うセドリックに今度はこっちだ、とローランドは彼の肩を掴み、連れて行く。
「これで、どうでしょう陛下」
「見事だセドリック。」
「ありがとうございます。では、私はこれで」「まだ、絵画もあるだろう?」
「それは、時間がかかるので、後日に。私にはソフィアとの約束がありますので」
「王命だ。一緒に書斎へ来てくれ」
あからさまに不自然なローランドの態度に、セドリックは訝しむ。
暫く廊下を歩きながら、廊下を豪華絢爛に装飾をし続けた。
セドリックは完全に不信感を募らせていた。いつも自分を大して気にも留めなかった国王が、妙にベタベタと話しかけてくる。いったい、なんなんだとローランドの背中を見つめた。
そんなとき、ローランドが足を止めた。
打つかる前にセドリックも足を止める。
「……陛下?」
「その、セドリック。
……ワームウッドのことは、災難だったな」
セドリックは肩をびくつかせ、視線を落とした。先日の件についてだろう。
ローランドなりに自分に気にしてくれていたのかとようやく気付いた。
お人好しのプリンセスに、お節介な執事の次は、おおらかな王様。
この城で自分を構う人間が随分と多くなったと、嘆くセドリックは寂しげな目をした。
「……あいつは、私の唯一の相棒でした。僕が何を企もうと、いつも隣にいた。それが、あんな形で決別することになるなんて……思いもしませんでした」
「お前は善人になりたいと思っているのに対し、ワームウッドは悪人であり続けたいと思っていた。そのすれ違いは、お前達に別れをもたらした。避けられかったことだったと思う。
だが、私は、お前が此処に残ってくれたこと。ソフィアの味方で有り続けたことを感謝している。ありがとう」
「……陛下。いいえ、ソフィア姫だけではありませんよ。私は……昔から。
貴方の味方でもあります」
とうとうローランドの書斎まで来てしまった。二人とも緊張気味に部屋へ入っていく。
ぱたん、と閉められると、外の光とともに喧騒が完全に遮られた。
二人きりの部屋に居心地が悪い。
我慢の限界に来たセドリックが不自然なローランドの行動を追求しようと口を開く。
「……陛下。本当は私に用など無いのでしょう?なにを私に隠しているのです?」
セドリックの追求に、窓の外の中庭を眺めていたローランドは、ふと真面目な顔になって振り返った。窓の向こうでは、大急ぎでマフィンを焼き直し、テーブルを整える子どもたちとベイリーウィックの姿がようやく見え、ローランドは小さく安堵の息を吐く。
「……気づかれていたか。すまない、セドリック。実はな、中庭での準備が少しばかり……いや、大いに手違いがあったらしくてな。お前を驚かせまいと、時間を稼がせてもらっていたのだ」
ローランドは少し決まり悪そうに身じろぎすると、それから真っ直ぐにセドリックの目を見つめた。その瞳には、かつてセドリックを「無能な魔法使い」と呆れていた頃の軽薄さは一切ない。
「それに……これは私自身の我が儘でもある。お前と二人きりで話しがしたかったんだ。」
ローランドの言葉に、セドリックは面食らったように目を瞬かせた。てっきり、また中庭で自分の魔法が必要になるような大失敗でも起きたのかと思っていたのだ。
「私と、二人きりで……ですか?」
「ああ」
ローランドは書斎の重厚な椅子を勧め、自身も腰掛けた。
「セドリック。……先日の件は、本当にすまなかった。」「その件はさっき聞きましたよ」「嫌、それだけでなく、今までのことも。私は、直ぐになにかあれば、お前のせいばかりにして、責任を押しつけていた。今まで、お前の言葉を十分に聞いてやれていなかった」
「えっ……?」
「これからは、お前を宮廷魔法使いとして。いや………、この城の大切な仲間として、もっと信じようと思っている。
完璧な魔法じゃなくていい。
お前自身を、だ。
だから、何か困ったことがあれば、
今度は私を頼ってくれ」
普段は威厳のある国王からの、飾らない、そして真実の言葉。
セドリックは驚き、言葉を失った。
これまでずっと「どうせ誰も自分をまともに見てくれない」と心を閉ざしていた彼にとって、ローランドのその言葉は、冷え切った心にじんわりと染み込むレモンキャンディーのように、少し酸っぱくて、ひどく温かいものだった。
「陛下……」
「最初は私がいれば、またお前が緊張してしまうのではと心配したが、ソフィアに諭されてな。私もお前と、仲良くする努力を始めたかったのだよ」
セドリックは、じわじわと胸の奥が熱くなるのを感じた。
ずっと自分を認めなかった国王が、いま、真実の言葉を語っている。かつて悪夢の中で自分を嘲笑っていた幻影が、ローランドの誠実な眼差しによって、霧のように消え去っていく。
「……陛下。私こそ、いつも不手際ばかりで。ですが、その……そう言っていただき、ありがたく思います」
セドリックが少し照れくさそうに、しかし真っ直ぐに答えると、ローランドは嬉しそうに破顔した。
ちょうどその時、書斎の扉が小さく開いた。息を切らせたジェームズが顔を覗かせる。
「父上!
セドリック! 準備ができたよ!」
「よし、セドリック。
行こう。みんながお前を待っている」
ローランドは優しくセドリックの背中を押した。
【エピローグ:とある一家の御茶会議】
中庭に広がっていたのは、きらびやかな宴会ではなく、白いクロスが敷かれたテーブルと、シンプルな白い食器、そして焼き上がったばかりのブルーベリーマフィンの香りが漂う、とてもこじんまりとした空間だった。
あがり症のセドリックは、ロイヤルファミリー全員が笑顔で自分を迎えてくれる状況に、ひどく緊張していた。
「あ、あの、私のような者が、このような席に……」
オドオドする彼の前に、ソフィアがそっと歩み寄り、その小さな手でセドリックの袖を引いた。
「さあ、セドリックさん。
ここに座って!」
恐る恐る席に着いたセドリック。彼の前には、ベイリーウィックが淹れてくれた、アプリコットの甘い香りがする温かい紅茶が注がれる。
緊張を隠せないセドリックは、手元にあった砂糖のポットから、スプーンで何杯も何杯も砂糖をすくい、自分のカップへと投入し始めた。一杯、二杯、三杯、四杯……。
それを見ていたソフィアは、
ぽかんと目を丸くした。
「わあ!セドリックさん、そんなにお砂糖を入れたら、体に悪いよ!」
思わず口をついて出た少女の率直な言葉に、セドリックの方が驚いて動きを止めた。
(……体に悪い、だって?)
これまで、彼はいつも独りきりだった。
塔にこもり、怪しげな実験を繰り返し、誰からも理解されず、相棒の鳥とだけ話す毎日。
誰も、自分の体のことなんて、気にかけてなどくれなかった。
それなのに、この目の前の小さなプリンセスは、当然のように自分の健康を心配し、周りを見渡せば、ローランド国王も、ミランダも、アンバーもジェームズも、心配そうに、そして温かい視線で自分を囲んでいる。
(ああ、心配してくれる人がいるというのは……こんなにも、温かいものだったか)
なんだか、無性に嬉しくなって、胸の奥から込み上げるものを隠すように、セドリックはくすり、と笑った。
「……ふふ、ふふふ」
なんだか急におかしくなって、そして言葉にできないほど嬉しくなって、セドリックはくすり、と声を立てて笑った。
「これは失礼。つい、甘いものが欲しくなってしまいましてね」
セドリックは、皆の温かい視線を受け止めながら、砂糖で甘すぎるほどに甘くなったアプリコットティーを、ゆっくりと口にした。
喉を通り過ぎるその温かさは、彼の胸の奥の孤独を、静かに、優しく溶かしていくようだった。
アンバーが「足りないわ」と機転を利かせてベリーのマフィンとは別に。
茶葉が練り込まれた、
焼きたてのマフィンを手に取る。
ローランドが「信じる」と言ってくれた、あの真実の言葉。
そして、自分をこの席へと導いてくれたソフィアの優しい手。
完璧な豪華さなんて、最初から必要なかったのだ。シンプルで、お互いを思いやる心さえあれば、それはどんな宴会よりも記憶に残る最高のひとときになる。
セドリックは、皆が囲む温かい視線をしっかりと受け止めながら、目の前の少し焦げているマフィンを口にした。
紅茶が香る柔らかくてしょっぱい味に涙が出そうになる。
しょっぱい??
…………。
嫌な予感がしたが、セドリックは黙々と口を動かして、平然とすまし顔でソレを飲み込んだ。
隣で申し訳なさそうに見ているソフィアと目が合う。
セドリックはソフィアに話しかけた。
「どうしたんだね、ソフィア姫」
「約束していたジャムサンドクッキーじゃなくて、ごめんなさい。
マフィンおいしい?」
ソフィアの少し不安げな問いかけに、セドリックはふっと表情を和らげ、紅茶のマフィンをそっと置いた。
「……ああ、とても美味しいよ。
お母さんが作ってくれたクッキーにも、
負けないくらいにね」
その言葉を聞いた瞬間、ソフィアの顔にパッと大輪のひまわりのような笑顔が咲いた。
「よかった……! アンバーが茶葉を入れようって言ってくれたの。ジェームズも粉を混ぜるのを手伝ってくれたんだよ」
「ふん、通りで少し不格好な形のものがあると思ったが……心のこもった味だ」
セドリックの少し減らず口を叩くような、けれど優しい声に、ジェームズが「おい、僕の作ったやつを言ってるのか?」と笑い、アンバーも「私のアイデアが完璧だったってことね」と誇らしげに胸を張る。
ローランドとミランダも、そんな子供たちとセドリックのやりとりを、目を細めて見守っていた。
セドリックが口にしたのを確認してから、皆もそれぞれマフィンに手を伸ばす。
すると、一斉に皆の顔が微妙な顔つきに変わった。
セドリックはすまし顔で紅茶を飲んでいる。
沈黙を破り、ジェームズが先に叫んだ。
「これ!
砂糖じゃなくて、塩が入ってるよ!!」
ジェームズの叫び声に、中庭が一気に大騒ぎになる。
「ええっ!?」「まさか、私が間違えるはずが……あ、あの時ジェームズが粉をひっくり返したからよ!」
「僕のせいにするなよ、アンバー!」
大慌てでうろたえる子どもたちと、慌ててお水を運んでくるベイリーウィック。
そんなロイヤルファミリーの賑やかな大混乱を特等席で見つめながら、セドリックは今度こそ、お腹を抱えて声を上げて笑った。
かつての相棒はいなくなってしまったけれど。
失敗だらけで、少ししょっぱくて、けれど世界で一番温かいお茶会が、新しい彼の居場所だった。
悪夢の底へと落ちていく道化の影は、もうここにはない。
みんなで作り直した不格好なマフィンとともに、砂糖で甘すぎるほどに甘くなったアプリコットティーを、ゆっくりと口にした。
世界は今日も回っている。
けれど、今日からの彼の世界には、もう「何もない」なんてことはなかった。
不器用で、でも誰よりも温かい「家族」との御茶会議は、彼の凍えた心を、優しく、確かに溶かしていくのだった。
こうして、ソフィアの望んだお茶会は、完璧でなくても、だれの記憶にも残る。
最高のお茶会になった。
最後はセドリックがお礼に、
皆の前でマジックを披露して
この物語は幕を閉じるのだった。
